未来23-001

2020年4 月 15日、世界の動きに合わせ、日本でもCOVID-19のドライブスルー方式のPCR検査(以下、ドライブスルー検査)の実施が認められた。これに併せて、わたしたちの地域も医師会に委託されたドライブスルー検査が開始された。

わたしは元々途上国の医療に興味があったため、野外で行う医療行為から学べることが多いと考え、この仕事に迷わず手を挙げた。倍率を勝ち抜くことができるだろうかと不安であったが、蓋を開けると他に応募者はいなくすぐに採用が決まった。当たり前であった。1 月 30 日にWHOより「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」が宣言されてまだ3か月も経たず、予防方法も死亡率も明らかになっていなかったのだから。この周りの反応に、わたしは初めて得体の知れない感染症に対する恐怖を感じた。 試行錯誤の日々が始まった。野外で実施することがいかに自然との闘いであるかを感じた。夏は長袖ガウンの暑さと、冬は手袋の上からおこなう手指消毒の冷たさと、普段はなんとも思わない風の日は検体採取したスピッツの安全確保と風向きに合わせた清潔・不潔のゾーニングの配置換えを。病院内がいかに管理された場所であるかを感じる日々だった。毎日のように新しい事態が起こる、その度に一緒に働く医師と根拠のある対応を確認し合いながら進めていた。 暴露予防のため、検査対象者やその家族との会話はできなかった。指示ボードやホワイトボードでのやりとりが主であった。更にお互いにマスクをしている。実際にどこまでできていたかは分からないが、いかに相手の心情を想像し、目で優しく寄り添えるかを意識していたのを覚えている。また病院ではあまり経験したことのない、窓越しに声を張った「お大事に」の声かけも大事にしていた。

このCOVID-19の経験が日本の今後の医療体制強化に繋がること、そしてドライブスルー検査の個人の経験が将来どこかで緊急医療に携わった時に活かせることを祈りながら、ここに記し覚えておきたい。

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