未来23-002

私は小児集中治療室(PICU)に勤務する看護師です。COVID-19流行下で一番心を痛めた経験は、幼児期のCOVID-19罹患患児との関わりです。

当院では、COVID-19に罹患患児はPICUの個室に収容していました。通常の小児病棟は基礎疾患を持つ子どもが入院しているため個室の不足やゾーニングが難しく、またコロナ病棟には小児看護の知識をもつ看護師が配置されておらず、小児患者を看ることができなかったからです。

COVID-19患者の看護にあたる看護師をテレビで見ることはありましたが、当院では不織布キャップ、N95マスク、水中メガネのようなゴーグル、長袖不織布ガウンの上に手袋、手袋と不織布ガウンを養生テープでとめ、その上からビニルガウン、手袋をさらに重ねて再度養生テープで止める。といった装備をしており、テレビで見るよりも重装備でした(重装備であればより安心といった院内の方針なのかもしれません)。

このような装備をした人を見て、子どもはどう思うでしょう。ただでさえ、大好きな家族と離れてひとりぼっちで、何もない部屋、檻のようなところ(小児用サークルベッド)に入れられているのに、表情も見えず、青い服を着た変な格好をした人が来るのです。

患児と接する中では、看護師のマンパワー不足もあり、例えば子どもが個室で泣いていても、すぐに行くことができず泣き疲れるまで放置になってしまうこともありました。個室に入るには前述のような装備をしないといけないこと、いくら感染防護具を着用していても自身の感染予防の観点から接触の機会を減らしたいなと思っていたことも事実です。 それでも、なるべく患児に寂しい思いをさせないように、見守りモニターやナースコールを使用して個室の外からでも患児に声をかけたり、個室の扉は外が見えるようになっていたので、個室の外で手を振ったり、面白い表情やアクションをしたりと工夫していました。でもきっと、患児にとっては全く気休めにもなっていなかったと思います。私は個室の病室の中から、こちらをみている無表情であったり、泣いている患児たちの顔が忘れられません。

患児はきっと入院によって「置いていかれた」「裏切られた」という思いを抱えているのではないかと思います。隔離期間が明けて家に帰ってもしばらく無表情だったのだろうな、入院の経験がトラウマになっていないだろうか、今後の成長発達に与える影響はないだろうか…と言ったことが心配です。5類感染症に移行し、隔離や入院が必要でなくなった今、同じような思いをする患児は減っていると思いますが、未知の感染に対して子どもの成長・発達を支える看護をどう提供したら良かったのか今でも疑問に思っています。

「感染看護の未来へ」トップに戻る