未来23-007

2019年11月に中国武漢で発生が確認された新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)は、わが国でも全国に拡大し、2020年4月に第一波、8月に第二波、11月には第三波が到来する事態となりました。2020年2月以降、私の勤務する病院でもCOVID-19患者の入院を継続的に受け入れています。初期の頃から、未知の感染症に対する不安や恐怖を抱きながらも医療者として看護師として、果たすべき役割を一人ひとりが遂行してきました。

病院全体の体制作りとしては、初期の頃はPPEの脱着などを含めた感染対策に関するスタッフ教育、部署マニュアル・感染対策マニュアルの整備、感染者受け入れのための部署のゾーニング、COVID19専用病床の整備などを行ってきました。その後、患者数の増加に伴って生じたPPEの不足に対しては、各部署での物品調整や使用期間の調整、COVID-19患者対応スタッフの人員配置の変更や福利厚生の整備、接触を伴う看護ケアのルール作り、職員のメンタル面サポート、倫理的ジレンマへの対応、新たに生じた業務の調整、多職種との調整、委託業者との相談など多くの部門、職種の人達が垣根を越えて協働していく対応が求められており、災害時対応と同レベルで病院全体での取り組みを実施してきました。そしてその対応は2年半という長期に渡って必要となり、感染者数の増減に合わせた対応を行ってきました。

個人的に最も大きな影響があったと感じるのは面会制限です。高齢の患者にとって入院後家族に会えない状況やソーシャルディスタンスのために同室者と関わることができない状況は大きな影響を与えると感じています。数値化はできていませんが、人との関わりが減少した高齢者はせん妄や廃用症候群となることが多く、治療や治療後の生活環境の選択に制限が生じていました。また、医師からその都度説明を行っていても、ご家族が患者に直接会えない状況では、病状の悪化やADLの低下をイメージすることができず、退院時に初めて患者の状態を理解して驚かれるような場面もありました。そして倫理的ジレンマを最も感じたのはEnd of Life Care(以下EOLC)を行っている患者・家族への面会制限でした。患者の意思決定支援に大きな影響を与える家族に会えない状況で治療やケアを進めていかなければならい状況は、今まで実践してきたEOLCとは全く違う看護実践でした。患者の最後の希望を聞いても叶えてあげることができないため、聞くことさえ躊躇してしまうこと、最後の時間を大切な人と過ごさせてあげることができないこと、亡くなっても面会も直接触れることもできずにお別れをお願いすること、全てが苦しく、看護することの意味を見失っていくような出来事ばかりでした。しかし、そんな中でも工夫して行えた看護がたくさんあったと思うので、今後言語化して、みんなで共有していく必要があると感じています。私たち看護師は、苦しい経験したからこそ、看護の意味を考えながら実践を行い、患者と家族を結ぶ役割を積極的に努められるようになったと思います。

今もまだCOVID19患者の受け入れは続き、一般では対応が緩和されつつありますが、病院では感染症患者へのケアは同じように続いています。その状況の中で看護師は一時失っていた感染症患者への看護を考えることできていると思います。COVID-19患者もそれ以外の患者と同じようにケアがしたい、COVID-19患者のEOLCも同じように行いたいと思い、対応を行っています。今まで看護させて頂いたCOVID-19患者さんへのケア経験を、これから対応するCOVID-19患者さんへ活かしていくこと、そして新たな感染症看護へつないでいくことができればと思っています。

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