未来24-014

高齢者施設におけるCOVID-19クラスター対応を経験して

私が日ごろから感染管理活動に関わっている高齢者施設で、COVID-19のクラスターが発生しました。この時、施設の感染管理を担当している看護師を中心に、全職員が感染拡大防止策を粘り強く行ったことにより、想定範囲内の拡大に抑えることができました。

国内でCOVID-19の罹患者が増加し、医療機関ではCOVID-19患者の入院病床がひっ迫している時期でした。当該施設では、入居者がCOVID-19に罹患した際に、医療機関への入院ができないことを想定し、施設内での対応マニュアルを整備し、全職員に対して、感染者が発生した場合の感染者の隔離と濃厚接触者のリストアップ、ゾーニングと個人防護具の着脱の訓練を行っていました。そのような中、発熱した1人の入居者のCOVID-19抗原検査結果が陽性であり、その後、同じフロアの入居者へ感染が拡大していきました。訓練をしていたように、感染者の隔離と濃厚接触者の特定、ゾーニングを速やかに開始しました。私は、施設の感染管理担当看護師と電話で随時連絡をとり、状況の把握に努めました。そして、日々変わる状況を継続的に分析し、施設の感染管理担当看護師とコミュニケーションを緊密にとりながら実践可能な感染対策を検討していきました。また、濃厚接触者が感染者となった場合のゾーニングの変更案を段階的に検討し、この先一時的に感染が拡大する可能性が考えられるが、ひとつの特別な対策ですべてが解決することはないため、今の対策を職員全員で辛抱強く確実に行うことが重要であることを伝え続けました。施設の感染管理担当看護師は、今後の感染拡大を具体的に予測しながら対応し、直接ケアにあたる介護職員の不安の声を聞き、落ち着いて対応を継続していきました。介護職員、看護職員、事務職員が、情報共有をはかりながらそれぞれの役割を遂行し、感染は他のフロアへ拡大することはなく、約3週間で収束しました。

令和6年度の診療報酬改定で示されたように、高齢者施設における感染対策の推進および今後の新興感染症への備えのため、高齢者施設と医療機関等との日ごろからの連携のしくみづくりは重要な課題であると考えます。そして、外部から支援者として高齢者施設の感染対策に関わる場合は、高齢者施設のことをよく知り、効果的で実践可能な感染対策を施設の職員とともに考えることがとても大切だと思います。

この経験は、高齢者施設での感染制御の難しさ、高齢者施設の感染管理における看護師の役割の重要性、私自身の外部支援者としての在り方を改めて考える機会となりました。

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